大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)4770号 判決 1968年2月21日

理由

一、請求原因(一)(二)の事実中、本件土地、建物について主文第一項掲記の各仮登記が経由されていることは当事者間に争いがなく、その余の事実は、《証拠》を総合してこれを認めることができる。もつとも、金二五〇万円の貸金の弁済期が当初の昭和三九年七月三日の契約の時から昭和四一年五月二五日と定められていたとの事実を認めるに足る証拠はなく(甲第三号証の一にはそのような記載があるけれども、この記載は以下に記載する各証拠に照して措信し難い。)。《証拠》によれば、この弁済期は昭和三九年七月三日の当初の契約では、予め明確な日時を定めず、借主たる福島正一が同人の振出した手形の不渡となつたとき等に到来するものと約定されていたのであり、その後昭和四一年五月二五日同人が原告に振出、交付していた手形が不渡りとなつて、同日弁済期が到来したものであることが認められる。

以上認定の事実によれば、昭和四一年八月一〇日の福島正一に対する代物弁済予約完結の意思表示の到達により、原告は本件土地建物の所有権を取得したというべきである。

もつとも、本件において、代物弁済の予約は原告と有限会社福島工業所との間で締結され、その予約完結の意思表示は原告から福島正一に対してなされているが、代物弁済の予約がなされてその旨の所有権移転請求権保全仮登記が経由された後当該不動産の所有権が第三者に譲渡されてその旨の移転登記が経由されており、その第三者に対して予約完結の意思表示がなされた場合には、右所有権の譲渡と同時に代物弁済の予約に因つて生じている予約完結債務の移転、すなわち債務の引受があり、それを予約完結権者(債権者)が承認したもので、予約完結権者は新たな譲受人に対する完結の意思表示によつて、有効に当該不動産の所有権を取得することができると解するのが相当である。

二、請求原因(三)の事実は当事者間に争いがない。

ところで、強制競売申立の登記は、競売開始決定によつて生ずる相対的処分禁止の効力を第三者に対抗されるためになされるのであり、不動産登記法第一条の「権利の変更」に該り、これによつて執行債権者は目的不動産から債権の満足をうける権利を保護されるのであるから、右執行債権者たる被告は不動産登記法第一四六条第一項、第一〇五条にいう「登記上利害関係を有する第三者」に該当するものと解するのが相当である。

そうすれば、被告の強制競売申立の登記は原告の所有権移転請求権保全仮登記の順位よりおくれるのであるから、被告は原告に対し右仮登記の本登記手続を承諾すべき義務があること明らかである。

(なお、民事訴訟法は不動産について競売開始決定が二重になされることを禁止し、記録添付の制度を設けているから、登記上仮登記の順位におくれる申立債権者の競売開始決定に基づく競売手続でも、仮登記の順位に優先する抵当権者のために記録添付のなされていることもあり得る訳であるが、本件においてそのような主張立証はない。)

以上の次第であるから、原告の本訴請求を正当として認容

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例